華やかなニューヨーク上流社会:マーティン・スコセッシの恋愛もの

エイジ・オブ・イノセンス/汚れなき情事」

 

 

ハードなバイオレンス映画を得意とするマーティン・スコセッシ。これは同じ監督作なのでしょうか!フェミニンささえ漂う、一枚一枚絵画を繋ぎ合わせたような美しい映像。抜かりなしのシーンの数々。1870年代ニューヨークの上流社会を描きつつ、ただ心のままに行動したいだけなのだが、この時代において後ろ指を指されてしまう一人の女性とその人に惹かれてしまう男性の恋の物語。美しい俳優陣とクラシカルな衣装、馬車や舞踏会、豪奢な室内装飾で見事に別時代へと誘う。

 

そよ風が通るサンルームでお茶会の図

公園の池前にて、ご挨拶。

 

話はもどかしい程にゆったりと進む。これに耐えられない人もいよう。この時代の上流社会のファッション、室内の設えや料理のサービングまでじっくりと映し込まれていく。料理は給仕が肉を切り分けてとっておきの皿に盛り付けられ、テーブルに置かれるまでを繰り返し映す。先を急がず、それを楽しむ映画であると心しておく。ゆったりと料理や社交を一緒に目で楽しむ。

カービングフルーツでしょうか。美しい皿と銀食器にも注目。

和を感じる盛り合わせ料理

 

そして、ダニエル・デイ=ルイスのエレガントな物腰を愛でる映画。

絵画と一体になる美しいダニエル・デイ=ルイスの横顔

ダニエル・デイ=ルイス演じるニューランドは婚約者がいながらも、アメリカへ出戻った幼馴染みのエレンが気になり、いつしか引き返せなくなってしまう。

 

三角関係になっていくのだが、ウィノナ・ライダー演じる婚約者のメイがこれ以上ない程の無垢さをまき散らす。ぴったりのキャスティングと思う。

咲き乱れるピンクの花の前で屈託のない笑みのメイ

メイとニューランドのデート風景がいちいち素晴らしい。花鳥園だったり、ヨーロッパ式庭園だったりと。背景がふたりを盛り上げる。

日傘スタイルが愛らしい。庭園で仲睦まじい二人。

花鳥園の東屋でおしゃべり。白い孔雀が優雅に歩く。

対して、ニューランドの幼馴染みであり、メイのいとこでもある、ミシェル・ファイファー演じるエレンは、大人の余裕と気怠さも混じってミステリアスな影を纏う人。

訳ありの匂いがするエレン。オリエンタル趣味の屏風の前で。

ヨーロッパの伯爵と結婚したが、上手くいかなくなりアメリカに出戻り中のエレン。ニューヨーク上流社会では噂の種にされ、自由奔放過ぎると一族からもトラブルメーカー扱いに。

 

婚約者メイから「力になってあげて。」と手助けをする機会を持つうち、エレンへと気持ちが向かっていってしまうニューランド。メイと結婚する気持ちは変わっていないが、心の揺れをなんとかしなければと考える。

 

ニューランドが花屋に立ち寄るシーンが美しい。メイに毎日スズランを届けてと注文する傍ら、気落ちしていたエレンに黄色いバラを届けてと言付ける。花に添えるミニレターに自分の名刺を入れることを躊躇ったニューランド。自分の恋心に気付いてしまったのだろう。

「あの黄色いバラを届けて」花と紳士の取り合わせは美しい。

 

「婚約期間が長過ぎる。すぐに結婚しよう。」というダニエルに「私への気持ちが揺らいだの?」、「他に好きな人が?」と確信をつくメイ。「他人を不幸にしてまで幸せになりたくない。もし何かを約束したなら私はいいから、その人を幸せにしてあげて。」とまで言う。

 

その清らかさ溢れる問い掛けに「僕らの結婚を妨げるものなんて何もないよ。」と真っ直ぐな眼差しで軽く嘘をつくニューランド。いかんよ。

 

なんやかやと理由を付けてエレンに会いに行くニューランド。エレンへ愛を語ったり、一族のために離婚はやめとけ、醜聞を広めることになると言ったり、あべこべな言動で恋に翻弄される。エレンが好きだけど、メイと結婚はする気ですと言う。恋に苦しむニューランドのノーブルな見た目にこちらも騙されてしまうのだが、結構ひどい事をさらりと言ってたりする。

 

結婚を早めるため、メイの祖母で一族のゴットマザーに相談に行く。

ゴッドマザーに相談へ。ゴージャスコテコテの内装。

エレンがヨーロッパへ戻って復縁すると聞いたダニエル。ゴットマザーの面前でもショックが隠しきれず、顔に出てしまっている。

エレンが夫の元に帰る?固まるニューランド。こんな時も花を背負うの図。

「復縁は死です。」

「あら、そうかしら。でも法律上は今でも伯爵夫人なのよ。」とゴットマザー。おそらく何もかもを見抜いている。

 

メイからエレンへの結婚が早まって幸せですの電報が届き、一緒にいたニューランドはそれを見て電報の紙を握りつぶす。メイが可哀そうになってくる。。。もう結婚は取り止めてあげてほしい。メイのためにも。

 

「メイが死ねば。。。?若くても突然死ぬことはある。」

いよいよマズイ考えに突き進むニューランド。段々こちらの見方も変わってくるよ!

 

メイとの表向きは順調、ニューランドの心は冷え冷えの新婚生活が始まる。メイの甲斐甲斐しさでほんとに可哀そうになってくる。ニューランドは何がしたいのでしょうか。エレンのいるパリにでも行ってしまってはどうでしょうか?愛人として幸せに暮らしてはどうでしょうか?とニューランドへの提案が山盛りになってくる。

 

と思っていたら、仕事も辞めて旅に出ようと思うとメイに言うニューランド。やはりパリ行きだろうか?と思った矢先、メイが「行けないわ、子供が出来たの。」と。俺はもう終わりだ。。。の表情のニューランド。こんな生活。。。とメイとの結婚生活は死んだも同然。エレンが好きなのにと恋心を収めることはもはや出来ない。

 

好きに恋心を育んできたニューランド。ふと皆は自分とエレンの事を知っているのではないか?と思い当たる。知っていて気づかぬフリを?妻も知っているのだ、と。

 

結構分かりやすく行動&お顔に出ていたし、隠せていなかったと思うのだが、当人はそうは思わないのが世の常なのですな。

 

ニューランドが色々やっとりますが、この映画はストーリーよりも麗しい画面を楽しむためのものと思う。余は満足じゃ。

 

場が持つお顔立ち。