ピンク・フラミンゴへの道:変態映画の極みへの到達はまだだった。

「マルチプル・マニアックス」

 

 

大・変態映画。

「悪趣味の帝王」の異名を持つカルト映画監督、ジョン・ウォーターズの代表作『ピンク・フラミンゴ』のテスト版みたいな。

 

『ピンク・フラミンゴ』は世界一下品なのは誰か?を競うというストーリーの、これも大変態映画。ドラァグ・クイーンのディヴァインが主演。本作でもディヴァインが主演で脇役陣もほとんど同じ顔ぶれという。ただ、こちらはなぜかモノクロ。ディヴァインの魅力も出るし、カラーの方がよかったんじゃないかな。

 

『ピンク・フラミンゴ』のディヴァインは独特のメイクアップで、完成されたショウアップスタイルだけど、本作のディヴァインは案外と普通の女性っぽい。って、もちろん普通ではないんだけど、ドラァグ・クイーンというよりもメイクが濃い大型女性という感じ。知らなかったら本物の女性に見えると思う。

 

だって、『ピンク・フラミンゴ』のディバインがこれだもんでよ。極端に釣り上げた眉のラインが特徴的。もう眉線無視。まろ眉的におでこに鋭角な線を描いちゃってる。金魚みたいな赤いドレスもいいね。

 

公園みたいなところに張られた怪しいテント。いらっしゃい、変態一座のショウですよ。すごい見世物小屋だから見て行ってよ、完全無料です!と客引きの男に誘われ、ゲロ食べ人間とか、全裸組体操とか、禁断症状に苦しむヘロイン中毒の男なんかを見せられる。

 

下劣だわ、キモイぜ、なんて眉をしかめつつも見てたお客。オオトリはディヴァインが登場。へぼい幕が開いてディヴァインが登場した途端に、観客達は頭から網が掛けられてみんな捕まってしまう。そうそう、タダほど恐いものはないって忘れちゃだめだね。

 

ディヴァイン変態一座は完全無料ショウで客を引き寄せて、金品を奪うちゃちな犯罪者集団なのだった。ディヴァインなぞはお楽しみで殺しもしちゃうという悪の人。

 

で、客引きをしてた男がディヴァインの内縁の夫で、実は他に女がいた。出会った頃は単純な万引き犯だったディヴァインの犯罪がエスカレートしているし、もうディヴァインのことが嫌になったと浮気相手に話したら、愛してるから殺してあげると。

 

あんたの旦那、別の女と逢引きしているよ。のタレコミ電話でディヴァインは浮気現場へ向かうんだけど、途中でいろんなことがあり過ぎて(お下劣過ぎるので割愛)こちらも浮気相手諸共殺してやるってなる。

 

と、男女の痴情のもつれがあったりはするんだけど、ストーリーなんてあってないようなもの。とにかく悪趣味の数々をどうだ!?とばかりに、これでもかと見せてくる。ディヴァインの罪の意識なのか神罰なのかわからんのだけど、罪を重ねるディヴァインはロブスターの怪物に襲われる。モノクロ映像なもんだから、急に出現した化け物に巨大ゴキブリかと思って、寒気がしたよ。ロブスターだから赤かったと思う。やっぱりカラーの方がよかったんじゃないかな。

 

映像的には素人がただカメラを回してるだけみたいな雑さで、ヘタ過ぎてびっくりした。笑えるけど、グダグダなんだが?の呆れ気味の笑いが多いかな。カルト映画だから気になるとは思うけど、これはパスしてもいいみたい。

 

 

 

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同じジョン・ウォーターズ監督でも、こちらは安心して観られるファミリー犯罪コメディだよ。映像もちゃんとしてるよ。

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黄金色の夢:テート美術館の至宝と「暗い部屋」が誘う静謐な時間

テート美術館 ターナー展

――崇高の絵画、現代美術との対話

国立西洋美術館

2026年

 

 

世界最大のターナー・コレクションを誇るテート美術館から、たっぷりのターナーと現代美術を所々に挟んだ魅力的な展示。すっかり秋めいてきた季節にしっくりきて、ゆったりと楽しめた。

 

会場に入るとプレリュードとして、「暗い部屋」と題された部屋が用意されていた。ターナーは自宅近くに私設の画廊を持っていて、初めに暗い部屋があり、客はそこで少し待たされる。絵を観る前に一旦落ち着いて知覚を呼び覚ますための準備部屋なのだ。それをなぞって照明を落とした小さな部屋には月を描いた美しいターナーの絵が並んでいた。粋な展示。この中では教会風の高い建物の傍らに幻想的に月が浮かぶ『廃墟の月光』が特に美しかった。

 

ターナーと言えば、荒れ狂う海の絵。ターナーの絵の半分は海の絵だという。荒れ狂う海の絵が観たい。もちろん来ている。

 

迫力の「荒れた海」エリア。美しいけど、恐くもある。ここにいたらやばい。荒れた空。たっぷりの水量が襲ってくる。どこにも逃げられない。。。

 

空は薄い層を重ね、海はパレットナイフや指で荒々しく擦れた厚みを出している。絵の前に立つと、絵だとわかっていてもその迫力に不安な気持ちになる。もうだめだ。。。もう死ぬしかない。。。

 

本展のタイトルに「崇高」とある。思想家エドマンド・バークが言う。「崇高とは、自然の圧倒的なちからを安全な場所において経験することから生じる。」と。そう、私は美術館のいちエリアで完全に安全に、この海の暴力を見せつけられて「崇高」を感じている。自然、恐い。

 

たっぷりのターナーが来ているので、別の時期、テーマの違う様々なターナー作品を観ることができるのだけど、私が特に心惹かれたのは、朧な雰囲気が拡がる絵画群。

 

これはヴェネツィアを描いたもの。朧過ぎて、一見するとなんだかわからない。ヴェネツィア?と言われて観れば、水面の向こうに美しいヴェネツィアの建造物が見えてくる。

 

近づいてよくよく観れば、ざざっと筆が走っているように見えただけの部分に小舟に乗る小さな人々の様子が。

 

と、何かを描いてはいるのだけど、仮に何を描いているのかわからないとしても、圧倒的な色彩の美しさが直撃してくる。

 

『ヴェネツィア、スキアヴォー海岸ー水上祭』と題された1枚。もはや朧が過ぎて、水上祭と言われましても?という感じなのだが、とにかく色彩がきれい過ぎる。これこそ、家に飾りたい絵でしょう?ずっと観ていたかった。

 

『ルツェルン湖ーブルンネンから見たウーリ湾』ほとんど白系のグラデーションで空と山が溶け込むように描かれいる。山の稜線を同色の白で盛り上げて描き表していた。その絶妙な筆遣いがかっこ良過ぎる。

 

ターナーの油彩画の他に水彩画も多く来ていて、それらの淡い色彩に今回とても魅了された。一日の様々な時間帯の光、大気の移ろいを観察していたターナーは、探求のために水彩で描き留めていた。ターナーの朧な描き方が水彩ととても合っていて、色の混ざり方が水彩では滲みながらも色の違いがはっきりと出ているように思った。

 

ピンクと水色の組み合わせが優しい。

 

白い建物群が淡い色彩の中で映えてきれい。

 

ささっと観るのは合わない。是非時間をゆったりと取って、ターナーの繊細な世界にじっくりと浸るのがいいと思う。

 

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女相続人の悲劇。父さんが大富豪だから本当の愛でもお金目当てって言われちゃう。私が不美人だからだっていうの?

「女相続人」

 

 

なかなかに強烈な映画だった。

 

ニューヨークの大富豪スローパー博士(ラルフ・リチャードソン)には未婚の一人娘キャサリン(オリヴィア・デ・ハヴィランド)がいた。亡くなった妻は才色兼備だったのに、娘の容姿はいまいちな上、非社交的な性格で不甲斐なく思っている。そんなキャサリンは従弟の婚約パーティで超ハンサムな青年モリス(モンゴメリー・クリフト)に出会い、求婚される。大富豪の父はモリスが無職で貯金もない事を知り、財産目当てであると娘に目を覚ますように言うのだが、キャサリンは超ハンサムなモリスからの熱愛に痺れているので、聞く耳は無い。

 

父の反対にあって、世間知らずのキャサリンが自分の意思で動き出す。それが良い方向に行くわけでもないのが悩ましい。愛情はあるけれど、亡くなった妻とどうしても比べて娘に冷たく当たってしまっていた父に対して、今まで超従順であったキャサリンが初めて半旗を翻すのだ。どんどん頑なになっていくキャサリン。

 

不出来な娘に超ハンサム青年が近づいた事を心配する父は、モリスと結婚するならば遺産はやらんぞと言うのだが、キャサリンの愛の決意は固い。モリスと駆け落ちすることにして、今夜馬車で迎えに来てと約束。その時に遺産はないけどと話をする。

 

で、、、モリスが来ない。

 

ガーン。そんな、、、あんなに熱い愛だったのに、、、荷造りを済ませてコートまで着ていたキャサリン。モリスが来ないことに納得がいかなくて動揺しまくる。

 

いまいちの容姿キャサリンを演じるのは『風と共に去りぬ』のメラニー役で有名なオリヴィア・デ・ハヴィランド。もちろん美女なのだが、魅力無しの痛い女を演じ切る。前半と後半で別人のように変化するキャサリン。この演技でこの映画のサスペンス味が爆上がり。アカデミー主演女優賞を受賞。

 

叔母(ミリアム・ホプキンス)がモリスが財産目当てであったとしても、それでいいじゃないかとキャサリンとモリスを応援する。モテない姪の行く末と幸せを現実路線で考えていることにビビった。これはこれで大きい愛。

 

遺産目当て野郎が!警戒していた父がその後、肺の病気で亡くなる。

 

と、姿を消したモリスが再度現れるっていう。煩い父親がいなくなってチャンス到来だから?

 

モリスにはかなり怪しい言動があるにはあるのだが、最後までモリスが遺産狙いなのか、トゥルーラブなのか真実は分からないまま。その分からなさを最後まで持続させるモリスの涼し気ハンサムぶりがすごい。お金を狙う嫌らしさが薄まっている。でも一級品の詐欺野郎なんだろう?と分からない。

 

「仕方なかったんだ」と訊ねて来たモリスを家に入れ、話を聞いてやるキャサリン。自分の所為で遺産を失うことになるなんてイケナイと思ったというのが理由だって。やっぱり嘘なのかどうか分からない。駆け落ちする時に用意していた贈り物のルビー付き豪華カフスセットをモリスに手渡し、今夜迎えに来いとやり直しを提案するキャサリン。

 

モリスは時間通りやってきた。呼び鈴が鳴るとキャサリンはメイドにかんぬきを留めなさいとドアを完全ロックするよう言う。「キャサリン!キャサリン!」呼び掛けるも部屋の灯りを消し、満足げな微笑みを浮かべて階段を上がっていくキャサリン。シャイでうぶだったキャサリンはもういない。愛に破れて深く傷ついたキャサリンは、冷徹な女となって復讐を果たしたのだ。「キャサリン!」と立派なドアを叩くモリスの映像に「ジ・エンド」の文字が被る。衝撃のラスト。怖いっす。

 

 

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現代最高の一匹狼、ジェイソン・ステイサム。今回も平常運転。

「ワーキングマン」

 

 

いつものやつです。本当にいつものやつです。だから、おやびっくり!とかないです。だけどあのいつものやつなんで安心して観てください。何が起こるかはだいたいわかる。でも、ステイサムのそれが観たいんだからいいんだと思う。

 

今回のステイサムは建設現場で働くワーキングマン。良くしてもらってる同僚が借金取りなのか、チンピラ3人に囲まれて暴力振るわれてるのを見掛けて、バケツいっぱいに入った砂利を投げつけて救助。ツルハシ攻撃も凄すぎて、ステイサムが今回も普通の人間じゃないってところを冒頭から披露してくれる。彼は特殊部隊軍人の過去を持つ人なのだった。

 

ステイサムは家族経営の建設会社の社長と奥さん、事務所で手伝いしてる大学生の娘とも仲良しなんだけど、その娘ジェニーがロシアンマフィアに人身売買目的で浚われてしまう。いつもお世話になってて家族同然と思ってるステイサムは娘を助けてって言われて。行くに決まっとるわな。

 

これってシルベスター・スタローンが共同脚本。なんだか納得だよ。物語の骨格が『ランボー ラスト・ブラッド』とよく似てるんだ。家族同然と思ってる若い女の子が凶悪な犯罪組織に浚われて酷い目に合うハラハラ、警察に任せてはおけないんで、超絶戦闘経験を過去に持つ主人公が自分で動くっていう。基本構造はもう古典の部類だね。別に古い型でもいいんだけど、ただのまんまじゃ、やっぱりちと盛り上がらんのよ。古い型を使うならその型の中になんか新しいものを入れてみてよ。

 

ステイサムを過去に沢山観てきてるけど、無双ものでもスタイリッシュだったり、生身アクションに工夫があったりで観ていて楽しいんだよね。本作ではそういう要素が薄くて、なんだか既視感多し。だから現代の映画としてぶち込まれてると見劣りしちゃう。折角ステイサムなんだから、他の俳優がやっても同じようになるの作ってもしょうがないっていう。ステイサム節で安定するけど、ステイサム頼みが強過ぎるんじゃ?

 

でも浚われた女の子がひたすら可哀想みたいな作りになっていないところがよくて、悪党に反撃したりする。空手習わせてもらってんだ、パパに。死んだおじいちゃんが軍人で自分も強くなんなきゃって子で結構度胸があるんだよね。だからただ泣いてるって感じでなく、戦ったりダッシュが速かったりするから笑っちゃうよ。

 

冒頭の砂利&ツルハシ攻撃を目撃していたジェニー(アリアンナ・リヴァス)。どゆこと?とステイサムに興味津々。助けに行くから待っててな。

 

で、敵がね、もう多過ぎなんすわ。次々出てきちゃうんすわ。どうやらいくつかグループがあるらしく、もうロシアンマフィア何人いんすかみたいなことになってて。で、登場人物多くて、なんかもうわかんないんだけど、まあ全員敵っつうことで観たよ。ステイサムが始末しちゃあ、次のロシアン出てきちゃうんで無双が続く。こういうところはサービス精神いっぱいだね。

 

あ?と思ったのが、ロシアンマフィアの大物のひとりとして出てきたジェイソン・フレミング。彼って犯罪組織のちょっと情けない手下役のイメージが強かったりしたんだけど、本作ではマフィアの大物役で、とても渋くて余裕と威圧感があって別人みたいだったよ。俳優ってすごいね。ステイサムとはガイ・リッチー監督の犯罪映画 『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』と『スナッチ』の両方で若い頃に共演してきていて同い年くらいだね。再共演いいね。

 

まぁ、とにかくステイサム。もはや他の俳優では代わりが利かない魅力がある。映画界の定食屋だね。毎回同じメニューなのになぜか食べたくなる。「ステイサムというジャンル」をどこまで極めるか、という俳優になってきつつある。

 

ステイサムはこれからどうなっていくんかな。もうアクションスターとして独自のポジションを築いているわけだけど、もうそろそろ60才になるっていうんだ。ステイサムに今から突然、例えばアンソニー・ホプキンスみたいな重厚な心理劇を演じてほしいかというと、それも別の話だし。だってステイサムが突然静かな部屋で2時間ずっと哲学的なことを語り始めたら若干落ち着かない気分になりそう。「いや、そろそろ誰か殴ってください。」ってなるかもしれない。

 

ステイサムはステイサムのまま、年齢に合わせて進化してほしい。今は「敵が多すぎる。全員倒す。」そのうち「敵は多い。でも、全員倒す必要もない。」そんな変化が出たりして。あれだね、ほふく前進して敵に見つからないようにしながら無駄な戦いを避けて静かに目的を果たすメタルギア的なね。

 

年齢を重ねてアクションが弱くなるステイサムじゃなくて、年齢を重ねたからこそ、ますます格好よくなるステイサムを追いかけていきたいよ。頼む。

 

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ワーキングマン

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止まない雨はない。真っ白メイクのダークヒーローが死から蘇る。もう、お前達は逃げられない。

「クロウ 飛翔伝説」

 

 

不思議な魅力いっぱいの復讐ダークホラー。

 

ハロウィン前日の10月30日を「悪魔の夜」だなんて言い出して、町のチンピラ集団が「火をつけろ!火をつけろ!」って町に放火していくとんでもない慣習が出来ていた。

 

そんな悪魔の夜。結婚式を翌日に控えたエリック(ブランドン・リー)とシェリー(ソフィア・シャイナス)の部屋にチンピラ集団が入り込み、シェリーを暴行してレイプ、エリックは6階の窓から投げ出され、ふたりは命を落とす。

 

1年後の悪魔の夜。チンピラ集団が放火へと繰り出そうとする中、墓場の土がもこもこと盛り上がり、エリックが蘇るのだった。

 

エリックは今は誰もいない部屋に向かい、残されていたシェリーの化粧道具で顔を白塗り、真っ黒いアイメイク、横に引き伸ばしたリップメイクを施す。このメイクが最高に決まっている。白黒メイクに長めの髪がブランドン・リーの美しく妖しい魅力を引き出して、独特の世界観を形作っているんだ。

 

どうしてメイクを?とかは一切説明なし。いきなり白粉を手に取ってメイクし出すエリック。これは彼が生前のエリックとは違う、別の存在へと変貌したことを象徴している。普通の人間ではない、死の世界から戻った存在としての姿が完成する。死者の化粧なんだ。

 

この映画は絵面がかっこよくて、映るもの全てに拘りが感じられる。放火されて燃える町並みの向こう、舞台の書き割りみたいにぺったりと赤が拡がっていたり、モノクロにいきなり一色ベタ塗りしたみたいな不思議な色彩がよく出てくる。画の拘り。

 

なんども映し出されるエリックが突き落とされた丸窓。エリックが殺された時のままに割れたガラスが鋭利に残る様がゴシックホラームードを引き立てるし、画が美しいよね。

 

カラスは死者を蘇らせるんだ。劇中、エリックの側にはカラスが飛ぶ。エリックの相棒でもあり、エリック自身でもあるカラス。エリックの目となり、自分達を殺したチンピラどもを探して導く。

 

次々とチンピラを成敗し、チンピラ集団のボスに近づいていくエリック。

 

悪のボス。悪役ばっかりやってるマイケル・ウィンコットが超ロングヘアで冷たい、温かみゼロの顔立ちで敵役として貫禄十分だったよ。

 

ボスの女(バイ・リン)が東洋系で、この年代の映画だと東洋人の美女をただ従順だったり、逆に誘惑するだけの人物として描くパターンがあったりするけれど、彼女はとても主体的でオカルトの知識を使って復讐に来るエリックの対策を立てたりして。マッチョなチンピラ軍団の中でしっかりとポジションを築いて、只のメスってことじゃない。こいつ舐めたらマズイなって。独特の妖艶さがありつつ、悪の賢さと切り離されていない、単なるセクシーな女の記号では終わらない人物設定になっていて印象的だった。彼女も目回り真っ黒メイクなんで、お前も死者メイクだね?って実はエリックと並ぶといい感じかも。

 

そして、悲しい死の側には正しい人がいてほしい。1年前の殺人事件で現場にいた警察官アルブレヒト(アーニー・ハドソン)。この人『ゴーストバスターズ』の4人目の人だね。アルブレヒトは渋くて、ゴリゴリダークな世界で人情のある温かいキャラがほっとするね。

 

なんだか随所に手応えのある熱量がほとばしっているんだ。統一されたダークで痛みのある世界観にどっぷり浸ろう。

 

ブランドンの父ブルース・リーは32才の若さで亡くなっている。ブランドンもこの映画の銃撃シーン撮影中に実弾を受け(空砲と思ったら弾が残っていた)、28才でこの世を去った。映画の中では死から蘇る不死身の主人公を演じていたブランドンが、現実の撮影現場で帰らぬ人となってしまった。

 

 

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出来過ぎサンタの弟に嫉妬。ダメ人間として生きる兄の目が覚める日、それはクリスマス!

「ブラザーサンタ」

 

 

兄弟。なぜか母さんが片方ばっかりいい子扱いでムカつく。そんな気持ちになんとなく覚えがあるならば、このサンタ映画を。クリスマスムードいっぱいでそんな心のわだかまりを軽く流してしまえるんだ。

 

フレッド・クロース(ヴィンス・ヴォーン)は子供時代に弟のニコラス・クロース(ポール・ジアマッティ)ばっかりいい子扱いされて育ったもんで、捻くれて成長。素晴らしくよい子の弟ニコラスは素晴らしいままに成人したんで、北極で本物のサンタクロースとして子供達に夢とプレゼントを準備する暮らし。

 

モシャモシャの白い付け髭付けてのサンタクロース役ではなくて、弟が本物のサンタクロースだっていうんで、ちょっと物語がよくわからないんだけど、そもそもサンタが何者かそう言えばよくわかってないので、ここは流して観る。

 

一方、兄のフレッドは捻くれたまま成人してダメ人間となっていた。詐欺行為で留置場に入れられ、その保釈金を弟に肩代りしてもらう条件として、長年会っていないから北極に来てもらって、クリスマスワークの手伝いをすることに。

 

北極に行くのにトナカイのソリが迎えに来た!自分はすっかり大人だけど、超速で夜空を掛けるソリに胸わくわくしたよ。

 

北極にこんな可愛いサンタクロースの村があったなんて。小人のエルフがいっぱいいて工場で子供達へのおもちゃを手作りしてるんだ。夢いっぱい。

 

で、かったるいかな~なんて思ってたフレッドだけどエルフ達と工場で楽しくノリノリ♪ なんか仲良くなってきたし。

 

ソリの操縦をしてくれたエルフのウィリー(ジョン・マイケル・ヒギンズ)の部屋の2段ベッドで一緒に寝てるんだ。ちょっと部屋がコンパクトなんだけどね。

 

ウィリーが素敵なサンタクロース秘書のシャーリーン(エリザベス・バンクス)のこと好きなんだけど、ちょっと見はシャーリーンとフレッドがお似合いみたいに見える。もしや、ウィリーとの三角関係になっちゃうのかな?クリスマスムードにどろどろは止めてな。

 

で、うにゃうにゃしてたら、効率化なんちゃら課みたいな所からクライド(ケヴィン・スペイシー)がやってきて工場閉鎖するとかでピンチ。サンタクロースは、子供達のプレゼントは、楽しいクリスマスはどうなってしまうんだ?というストーリー。

 

子供向けなのか大人向けなのか、どういうつもりで制作してるのかよくわからないサンタ映画なんだけど、所々クリスマスらしい暖かいメッセージを入れ込んでいて、やっぱりサンタ映画はいいね。

 

クライドの邪魔が入って工場でおもちゃが作れなくなってしまうくだり。もうクリスマスまで時間がないと諦めモードになるエルフ達に、とにかく作ろうとフレッドが提案。男の子には一番早く作れる野球バット。4秒で55本作れるって言うんだから、どんなミラクル工場なのか。夢の世界。女の子用にも一番早く作れるフラフープ。フラフープって!?戸惑う私。

 

秘書のシャーリーンも「でも子供達のリクエストと違うわ」と戸惑うと、フレッドは「大事なのは何かをもらえるってことだよ」って言うんだ。頬を打たれた気分だったよ。「朝起きて何かプレゼントがあったら、誰か来てくれた(サンタだね)と分かる」って。そうだ、クリスマスってそういうことだよね!と超素直になりました。サンタ映画って素敵だね。

 

悪い子にはプレゼントが届かないっていう悲しいルールについても物申してるよ!

フレッドが仲良くしていた孤児の少年が孤児院でケンカをしてしまって悪い子判定を受けてしまったのだけど、「人生は自分で切り開け。不幸を他人の所為にするな。自分を信じるんだ。信じればあとは何とか上手くいく。いいかい?」とフレッドは優しさを見せる。プレゼントだって届けるよ。小さい子供に悪い子判定は厳しすぎる。いい子になれる切っ掛けを世界の子供達に届けておくれ。

 

[オマケ] 兄弟間の確執がテーマにあるから、フレッドが兄弟が成功し過ぎで悩んできた人向けの自助会みたいなセッションに参加するのだけど、面子がビル・クリントンの弟だとかシルベスター・スタローンの弟とかで本物の実兄弟らが出演。その中に俳優スティーブン・ボールドウィン本人も交じっていて、「アレック(・ボールドウィン)じゃない!」を連呼。ジワジワさせてきた。

 

 

 

 

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赤い痣の奥様に魅せられて。ライバル作家の脅迫から僕が守りますよ。ヒット・ミー!!

「江戸川乱歩の陰獣」

 

 

探偵小説家の寒川(あおい輝彦)は首筋に線上の赤い痣がある美しい婦人、小山田静子(香山美子)と出会う。寒川の小説のファンだと言う静子は、寒川に相談を持ち掛ける。寒川のライバル小説家の大江春泥に脅迫を受けているというのだ。

 

赤い痣のあるうなじに見惚れる寒川。初めて出会った時から静子に夢中。

 

静子は娘時代に春泥と付き合っていたのだが、捨てて上京。実業家の小山田六郎(大犮柳太朗)の妻となっていた。この時代なので六郎には結婚前に男と付き合っていたことは隠している。誰にも相談できないし、同じ小説家の寒川ならば春泥の事が何かわかるのでは?と相談したのだった。ちょっと無茶っぽいけど、寒川は静子の品がありながらの妖艶な魅力に惹かれていたので喜んで協力を申し出る。しかし春泥が全く姿を現さないし、殺人は起きるし、静子にメロメロだしで、色々あり過ぎて解決できるんか?っていうストーリー。

 

江戸川乱歩原作なんで、おどろおどろ系で怖いかも?と思いつつ観たのだが、怖さはゼロ。単にエロ交ぜ映画だった。推理サスペンスとしてもかなり弱い。そう、ただ単にエロ交ぜ映画だった。それに応えるのは静子を演じる香川美子。奥様然とした楚々とした雰囲気がありながらの艶っぽさが溢れて、和服姿もお似合い。もしかして香川美子の美しさで持っている映画か。

 

そんな静子の夫、小山田六郎が渡英して鞭打ちを覚えて帰る。鞭打ちを仕込んだ英国女(田口久美)も日本に連れて帰って囲う。仲間と歓談しながら囲碁を楽しむ六郎と英国女。女は碁を打つパシッ!という音に打ち震える様子を見せる。

 

で、嫉妬に狂ってる春泥が静子の夫を殺してやると脅してたんで、この英国女が手掛かりになるかも?と寒川は単独で女を問い詰めに行く。女の滞在先のホテルの部屋で対峙する寒川。問い詰めてる側から女が帽子から服から靴からどんどん脱いで素っ裸になっていく。で、旅行鞄から鞭を取り出すと唐突に「ヒット・ミー!」言い出すんで、寒川も意味わかんなくて「なんだ?」ときょとん。鞭を手渡されて女がベッドに突っ伏すんで、そういうことかと「小山田は一体、君の何だったんだーー?」とビシバシ鞭打つ。結局、女から聞き出せたのは「これ(鞭打ち)を小山田に教えたのは君か?」YESってことだけだった。。。捜査が全然進まん。

 

静子は別邸に寒川を呼び出して、春泥が屋根裏に忍び込んで、天井から小山田夫婦の寝室を覗いていると訴える。覗きとか鞭打ちとか変態要素を散りばめて物語は進む。静子を助けてやりたいのに全然春泥に近づけない寒川。どうなってんだ?ってそんなに捻りはないのだけど。

 

美しい女優陣が揃って出演。ちょい役で倍賞美津子、加賀まりこ、意味ありげにちょくちょく出てくる野際陽子が美しくて後で何かあるんだなと楽しみに待っていたんだが、何もない。。。え?

 

最後の赤い部屋のシーンが撮りたかったのかな。全体に暗くて湿ったムードはあるんだが、耽美的なところまではいっていなくて、だとしたら淫靡に振り切るでもなく、ちょっとどういう位置づけで撮ったんだろう。当時おどろおどろ系で大ヒットした横溝正史原作の『犬神家の一族』と『八つ墓村』の狭間に公開されて大コケしてしまったんだと。まぁ犯人もバレバレだしな。

 

 

 

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