短編だからこそ。一気に流れて観た者を置き留める、放心状態の傑作ショートムービー。

短編映画「野獣」

 

監督:ジェレミー・コント

 

 

仲良しの少年ふたり。ふざけ合って遊んでいるうち、ひとりが泥の沼に嵌ってしまう。ほんとに出られないと言いつつ、なんとか泥から這い上がり、相手も泥の沼に落としてみる。出られない、出られないとおふざけを続けられればよかったが、泥に嵌って体が少しずつ沈んでいく。事の重大さに気付いて助けを呼びに駆け出すが、近くに人はいない。泥の沼に戻ると少年の姿は見えなくなっていた。。。

 

歩き出した少年は上半身裸。広大な砂地が続くダイナミックな景色を切り取り、そこに無防備な少年が移動するのをセリフなし、少年の息遣いと追い立てるようなメロディだけで見せる。少年の心の内は見えない。

 

人気のない道をひとり歩く少年に一台の車が近づく。心配した親切な婦人が「家まで送るから乗っていきなさい。」と車の助手席に乗せる。非日常の画面から安全地帯の車中へと画面は移り、大人と子供という対比が少年の幼さを浮き出させる。シートベルトをした裸の少年の細い肩、顔には砂がついている。

 

ラスト、少年の気持ちの栓が外れて溢れ出す様を見事に表現して心が揺さぶられる。鮮やかな切り口の短編映画だった。素人の少年を使ったという、その演技も素晴らしい。