「部屋とこころのシンプルな掃除」
ドミニック・ローホー:著

シンプルライフをベースに数々の著書を出しているドミニック・ローホーさんの掃除本。掃除の実践についても書かれているが、掃除を心を整えるものとして捉え、別角度から切り込んでいる。
特に最終章の「掃除のメタフィジカル的考察」で、掃除を禅の勤行に准え、西洋的な受け止めとしてセラピー、心の均衡を保つ効果を見出しているところが興味深い。一心に掃除をすることで瞑想する手段に成りうると。
「禅では手作業中に行う動的瞑想のほうが、座禅を組む静的瞑想よりも価値があると教えています。室内を掃除しながら瞑想を行うと、静かに座禅を組む時に襲ってくる煩悩を避けることができます。
いにしえの中国の禅僧香厳が庭掃除をしていた際、小石が竹に当たる音を聞いて悟りを開いたというエピソードは有名です。」
これには大きく頷く。
床に座って座禅を組み、心を落ち着かせるのは案外と難しい。集中が続かないので、心を無にするどころか邪念が次から次と湧いてくる。
今は近くにいい寺がないのでしばらく遠ざかっているのだが、以前は寺に行って座禅を組むことを続けていた。信仰を問わずに座禅の日を設けて寺を解放してくれている懐の深い寺がぼちぼちとある。
山奥の禅寺に座禅を組みに1泊したことがある。早朝に座禅を組んだ後、仏像の置かれた広い部屋を掃除するよう言われた。ここは基本ひとりで泊まるところで、私の他には妊婦がひとり。かなりお腹が大きくなっていたので、妊婦は大事を取って掃除はなし。私ひとりで長箒を持つ。塵取りがないので僧侶に訊ねると、部屋に隣接する開け放した縁側から塵は外に掃き出しなさいと言う。
部屋の隅から平行に掃いていき、縁側まで出るとそのまま塵を庭に掃き出す。素晴らしい解放感。ひとり広い部屋を少しずつ進んでいき、清々しい気分で掃除をしたことを思い出す。
今でもとっておきの立派な長箒を持っていて、気分が乗っている日はそれを使う。両手をリズミカルに動かしていると、なんとも楽しくなるからそうしていたのだが、心を整える効果は確かにあると思う。
ローホーさんは「掃除は自我を液状化させる禅の修行」とも書いている。ここでいう自我とは悪い意味でのエゴの事。エゴから無駄な迷いや苦しみが生まれるのを、自我を諫めることで心の平穏を呼び起こす。
部屋はきれいになる、心が同時に整う。こんな相乗効果を掃除に見出してはいなかった。清潔で整った部屋が心に良い作用を生むことは理解していたが、掃除すること自体で心が整うとの新しい知見。なんだか得をした気分で読み終える。
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