死を前に怖くなる老人の電話を受ける。死って何?愛って何?答えはないけど。

ショートムービー「一本の電話」

 

監督:マット・カービー

キャスト:サリー・ホーキンス

第87回アカデミー賞(2015年)短編映画賞受賞

 

 

※ネタバレを含みますので、ご注意ください。

 

心の支えを必要とする人の電話を受ける女性ヘザー(サリー・ホーキンス)。その日受け取った電話は、妻を亡くして2年、生きる事を止めにして薬物を大量摂取した、おそらくは年老いた男性、スタンリーからのものだった。

 

救急車を呼ぶから住所を教えてというヘザーだが、スタンリーの気持ちは揺るぎそうもなく、どうかこのまま話を続けてと言う。ヘザーは死へと向かいつつあるスタンリーと亡き妻の思い出や音楽の話をする。

 

人はいつか死ぬ。妻のいない人生に自ら生を終わらそうとするスタンリー。とても悲しいけれど、それを否定しない映画だった。

 

スタンリーの姿は見えない。カメラは殆どが室内で電話を受けるヘザーの姿を映す。20分程の短い映画の中で、ニット帽を外したボサボサのままの髪やとても普通っぽい編み込みのセーター、飾り気のない、もっと言うと地味な女性であるヘザーの人となりが一瞬で分かる。

 

同じ室内で別の電話を受ける男性がいる。冒頭、お互いに気になっていることが見て取れるのだが、当人達はぎこちなく挨拶を交わすに留まる。スタンリーとの会話でヘザーは生きていること、なんてことない日々の愛おしさに確実に触れたのではないか。ほんのすぐそこにある何かに手を伸ばし、物語は終わる。優しい映画。