ボウリング、アーミッシュ、義手、禿げ:どんだけ盛り込むの?コメディ

映画「キングピン/ストライクへの道」

 

監督:ファレリー兄弟

キャスト:

ウディ・ハレルソン

ランディ・クエイド

ヴァネッサ・エンジェル

ビル・マーレイ

 

 

※ネタバレを含みますので、ご注意ください。

 

スポーツトーナメントものでもあり、ロードムービーでもあり、腰砕けの笑いを随所に散らした、しっかりとしたコメディ。細かく笑いを入れてくるので、見逃さぬよう。

 

子供の頃に父親からボウリングの手解きを受け、天性の才能を伸ばして成長した、ウディ・ハレルソン演じるロイ・マンソン。大人になると州のボウリング大会で優勝を果たし、プロボウラーとして全米を周るため、故郷を発つ。

 

直後にビル・マーレイ演じるアーニー・マクラケンに賭けボウリングのペアに誘われ、下手を装ってふたりで大金をせしめるも、地元ボウラー達にからくりを見透かされトラブルに。アーニーに置いてきぼりをくらったマンソンは地元ボウラー達に捕まり、大切な利き手を失う。

 

賭けボウリングでペアを組む若き日のマンソン(右)とアーニー(左)

17年後、粗末なアパート。出っ張った腹に、頭てっぺん禿げで、分かりやすく落ちぶれて登場のハレルソン。この人は個性派ではあるが、括りとしては見栄えのいい俳優内にいると思う。が、なんでもやるタイプの俳優でもある!思い切り羽目を外したイケてなさを楽しんで演じている模様。いいすね。

 

見事な禿げっぷりを演じるウディ・ハレルソン

利き手を失ってボウリングが出来なくなったが、ゴム製の義手に州ボウリングの優勝リングを嵌めているマンソン。ゴム製義手については笑わせるエピソードを色々挟んでくる。義手がすっ飛んでしまうのを筆頭に、指部分がスカスカなのでペコペコと指折り数えて笑わせたり。しかし劇中、義手の人を凹ますような表現にはなっていません。好感が持てます。

 

レーンから義手付きで戻ってくるボウル。笑わせるのが上手い。

蛍光色コンドームの自動販売機のセールス(簡単に断られてた)でボウリング場に来ていたマンソン。

マンソンはピンの弾け音だけでボウラーの筋を理解できる!才能ある音を偶然聞いたマンソンはマネージャーになるからと一緒にボウリングをしようと誘う。金を作りたいためだが、その男イシュマエルはアーミッシュで外界での暮らしに興味がない。ボウリングは子供の頃に祖父に内緒で連れてこられ、今日も内緒で来ていたようだ。

 

その気のないアーミッシュの男にくらいつく。

アーミッシュを知っているだろうか?キリスト教徒で厳しい戒律を守り、近代文明を拒絶、昔ながらの自給自足で共同生活をしている宗教集団。お揃いの服装、電気も使わない。移動は馬車で、この映画ではボウリング場から自転車で帰っていくシーンがある。アーミッシュ的には自転車はセーフなのだね。

 

アーミッシュのイシュマエルは外での普通の暮らしを知らない。この設定で笑わしてくるので、アーミッシュのことが掴めていないと面白さが半減するかもしれない。超真面目人間と俗世界、あるいはタイムスリップものに近い感覚と思う。

 

イシュマエルを演じる俳優さんは初めて見たような?誰なの?と調べるとデニス・クエイドのお兄さん。似てない兄弟。イシュマエル役最高だった。

 

色々あって、途中で出会ったナイスバディの売春婦(とアーミッシュに呼ばれていた)クラウディアと3人でリノで開催されるナショナルトーナメントに向かうことに。あばずれクラウディアを信用しちゃいかんという雰囲気を醸しながらも、ここはロードムービーなので、リノへの旅でやっぱり打ち解けて仲間意識が芽生えていく。

 

マンソンとクラウディアもいい感じになってきて、途中マンソンの故郷を17年ぶりに訪れる前、己の姿に自信の持てないマンソンが「俺、どう見える?」とクラウディアに聞く。オープンカーの風で禿げ散らかしたマンソンの前髪をそっと撫でつけて直してあげるクラウディア。「素敵よ。」と優しさを見せる。只の胸デカ情緒無し女ではないところを垣間見せ、視聴者も3人が好きになっているところ。

 

映画内、禿げの扱いが多いです。

冒頭登場したきりだったアーニー。ビル・マーレイが演じていることから出演があれだけではないことはバレている。後半に再登場したアーニーも17年が経っているので老けて出てくるのだけれど、スタープロボウラーとしての華やかな生活から、マンソンとは違って羽振りがよさそう。パッと見、かっこよいヘアセットなのだが、無理やりな1:9分けに違和感。笑わそうという意図なのか、ビル・マーレイナチュラルな感じでストーリーとは関係ないのか微妙な感じで動き出す。

 

でも!映画で俳優の髪型に無頓着って事は絶対にないのだった。計算されつくしているのだった。終盤、宿敵アーニーと戦うマンソン。死闘を続ける中、アーニーの髪は乱れに乱れていく。。。やっぱり計算づくだった!

特注品の薔薇入りマイボウルを手に死闘を続けるアーニー

さぁ、どうなる?どうなる?

楽しい映画だった。そして何か心温まるのだった。

 

監督のファレリー兄弟は「メリーに首ったけ」などたくさんのコメディを作っていて、その後「グリーンブック」でアカデミー作品賞を獲る。振り幅があるね。