「シリアル・ママ」

うちのママが殺人鬼っていう強烈な話なんだけど、これがスーパーコメディ。細かいギャグをこれでもかと織り込んでブラックでシュールな笑いをたっぷり提供してくれる、夢みたいな映画。
ママのビバリー(キャスリーン・ターナー)はマナーばっちり、身だしなみばっちりのアメリカの正しい母代表みたいな人。鳥の鳴き真似「ウゥイ、ウゥイ」が上手い。

そんなママは近所でゴミの分別しない人とか、娘のデートをすっぽかしたマッチョ男とかが気に食わない。で、ママがそんなマナーの悪い人とかムカつく人に段々と辛抱たまらんくて殺していくのかなと思ったら、辛抱なんてしない。最初からブイブイ飛ばして、エンジン全開で殺していくんで展開が早い。
人間、生きてればムカつく相手の一人や二人いるよね。とママに寄り添う気持ち出そうになるかもと思って観てたんだけど、ママったら結構なせっかちかつ行動派なんで、そのうちに、こういうのも?っていう悪いとも思えない人々も殺るんで、笑っちゃう。
「ウゥイ、ウゥイ」の鳥好きのママからしたらチキンを食べてるのも気に食わないみたいで、チキンディナーを食べてたご近所の夫婦を殺害。ちょっと!ゴミの分別するし、すっぽかしをしない私であっても、チキンは食べてる。これじゃママに殺されちゃうよ。結構ママの目が厳しいんで、気が気でないね。
ビシバシとグロい殺人シーンを見せてくれるんだが、これはスーパーコメディなんで、グロが面白い。暖炉の火かき棒で例の娘のマッチョ男の腹を刺したら、火かき棒の先に内臓がくっついてきちゃう。ぐえっと気持ち悪い場面にならないように、つるっとした質感の内臓を使って本当のグロにはならない塩梅を保ってるのがキモ。安心して観られるね。
レンタルビデオ店でバイトしてる息子の所で、いつもビデオテープを巻き戻さないで返却するお婆さんを狙うママ。お婆さんがキッチンテーブルのローストラムをピカピカの大きな包丁で切り分けてパンにはさんで軽食作り。包丁はそのままに借りてきた”正しい”映画『アニー』を観るためにリビングへ。ママがそっとキッチンに入ってくるんで、その包丁で殺ると思わせての、一旦戻ってローストラムの塊に持ち替える。で、ローストラムの骨部分をバット握りでお婆さんの肩を豪打。痛めつけるだけ?と観る者を油断させての連打。テレビ画面に血しぶきが飛ぶの画で撲殺されたことをふんわりと見せる。
☆ローストラムで死ぬか?の疑問が出るのだけど、ロアルド・ダールの短編にある有名な冷凍ラムレッグ殺人のオマージュということです。アメリカ人は皆知ってる殺人方法ってことです。
面白いのが、早い段階で家族が連続殺人鬼はママじゃない?ってなるところ。うちのママが?あり得ないってなるんだけど、ママのことがわからない、ママ怖い。にはならなくて、これ以上人を殺さないようにママを見張ったりして、皆で全面的に寄り添う姿勢を見せる。連続殺人の容疑者として浮上した時でも仲良く教会へ出向いたりする、ある意味ハッピーファミリーぶりが素敵。

夫は精神的に何か問題を抱えているかもしれないと言って愛するママを見放さない。息子に至ってはレンタルビデオ店でバイトしていてスプラッタ―ものが大好きなんで、自分のママが殺人鬼ってことにときめきを禁じ得ない。
そのうちに世間から「シリアル・ママ(=連続殺人をするお母さん)」という呼称をもらって、ノリノリの展開へ。で、後半まさかの法廷劇に突入。マナーばっちり、身だしなみばっちりのアメリカの正しい母代表ルックスを使って陪審員の気持ちをほぐしまくって大活躍っていう、悪ノリ痛快スーパーコメディでまとまってる愛すべき映画。
(ドン・ノッツとかピーウィー人形とかアメリカ文化の引っ掛かりシーンが満載。何これ?と思ったら、そういうの全部おとぼけギャグだよ。)
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