ジブリアニメ「君たちはどう生きるか」

公開時に一切の前情報無し、予告編無しだったことで話題となっていたので、私もストーリーの前情報なしでそのまま観てみたが、評判がものすごく悪いことは知っていた。
あれ、戦争映画なのか?苦手だ。と思ったら、それは冒頭のみで、ジブリいつもの既視感あるキャラが色々と出てきて、後はファンタジー世界にどっぷり入っていった。
戦時中、病院の火事で母を亡くした少年眞人(まひと)は母の実家がある田舎へ疎開する。眞人の父は亡くなった母の妹、夏子と再婚し、眞人の新しい母となる。
疎開先の駅に眞人と父を人力車で出迎えに来た夏子。人力車に眞人が乗り、重い旅行鞄を載せる度に人力車がその重みでゆらりと重心が動くのを丁寧に描写するアニメーション。鷺が水面に足先をつけて着水する様子など、実写とは違う、これぞアニメーションという楽しい動きでジブリらしさが溢れる。いいっすね。もののけ姫のこだまポジションみたいな白い風船風の生き物はジブリというより、すみっコぐらし風であれ?と思ったけれど、可愛いおばあちゃんが何人も束で出てくるなど、ほんとにいつもの感じ。
なんだ、なかなかいいではないか、と序盤は見ていたのだが、眞人が異世界に入った頃から、異世界の特別ルールがテンコ盛りとなり、こちらは異世界ルールなんか知らないわけだから、それをセリフでタラタラと言われてもだな、みたいな事が頻発して、これいったい何してますのん?何のために何しているんですか?たしか、新しい母さんの夏子さんを探しに来たような??と、もうどうでもよくなっていった。
ファンタジーなので何がどうあってもありはあり、なのだけど、その中でも筋道がないと面白くもなんともなくなってしまうという、超基本がどろどろに崩れていた。「君は積み木をひとつ足すことができる。」の大叔父のセリフの後に簡単な積み木図解みたいなのが出た時、こんな、説明絵コンテみたいなのを入れてしまうセンス、大丈夫なのだろうか?と心配になってしまう。
そして、終わり方がまずい。もう少し腹落ちさせたり、眞人の心情や変化を表現するなりがないので、これで終わり??とキョトンとしてしまった。このラストを映画館で迎えたら腹立つかもしれないと思った。映画館では、ざわついていたんではなかろか。家でお茶しながらだし、エンドロールで米津玄師の曲がいい感じで被さっていたことで、ざわざわ感を回避したような気がする。
言われているような”難解”な映画なのではなく、ストーリーが崩れてしまって視聴者が分かるわけもない映画なのでは?普通に楽しい映画を作ればどうでしょう。もう巨匠となってしまって無理なのか。
ジブリアニメではお馴染みの棒読み声優。今回も棒読み風ではあるのだけど、毎度幾人かは出てくる、棒読みが過ぎて聞いているのが辛くなってくる現象。本作ではそこまで気になる人はいなくてよかった。後で声優を見てみると、あいみょんだったり、父親役が木村拓哉ということは気付かなかった。ジブリでハウル役をしていた時の声とはまた違っていて、”なんでもキムタクになる”と弄られてしまうわりには、案外色々と演じ分けられる俳優さんなのだなと。ずっと青鷺の声を小林薫が演じていると思ったら、菅田将暉だった。しかも小林薫は老ペリカン役だったので、ダブルびっくり。